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【羽車と環境】 印刷用インクの取り組み

2021/05/20

私たちのような紙製品を製造する企業で、大量に消費される副資材のひとつが「印刷用インク」です。印刷用インクは、経済や環境に対する考え方からこの半世紀で大きく変化しています。 ここでは、印刷インクが抱える問題や現在までの変化、そしてこれからの持続可能な印刷用インクのあり方について、羽車の視点から考察したいと思います。

【羽車と環境】 印刷用インクの取り組み


印刷インクが抱える問題と現状
印刷業界では、地球環境の保全と環境への負荷を少なくするための技術開発がこれまでも活発に行われてきました。印刷に欠かせないインクの技術開発も、そのうちの1つです。 そもそもインクとは、顔料、ワニス(樹脂、溶剤、油脂)と、少しの添加剤(滑財、硬化剤など)の3つの要素から成っており、用途に応じて配合や製法を変えてそれぞれの印刷物に最も適したインクが製造されます。

従来の印刷用インクは、石油由来の鉱物油がメインで使われてきました。しかし石油という限りある天然資源を使用し続けることへのリスクが高まり、1970年代から代替品の開発が行われてきました。そして現在では、環境に配慮した植物油系インクの使用が主流となっています。

【羽車と環境】 印刷用インクの取り組み

画像上:味わいある印刷で人気の活版印刷機。羽車では、オフセット印刷・活版印刷とも同じインクを使用している

環境と人に優しいインク
現在の私たちの生活において印刷物は欠かせない存在です。デジタル化の流れもありますが、印刷インクは日本だけでも毎年約35万トンが生産されており高い需要があります。その中において環境に配慮したエコインクの使用は必須課題として挙げられてきました。印刷インキ工業連合会が2018年に行った「環境対応型印刷インキに関するアンケート」結果によると、環境に配慮したインクの生産比率は年々高まりをみせ、ベジタブルインクに関しては95.6%まで到達しています。

このエコインク開発は、1970年代のオイルショックによる石油高騰がきっかけでした。この時点では、環境配慮よりも石油に依存したインクの使用を続けることが、コスト的にリスクが伴うことが表面化し代替品の開発が進みます。そこで注目されたのが大豆油です。鉱物油の一部を、大豆を原料とする大豆油に変えた“大豆インク”が誕生。1980年代からは各種印刷インクに使われはじめ、石油とは異なり大豆油は永続的な生産が可能なことから、環境問題に敏感な企業を中心に多くの印刷物に使われるようになりました。
しかし、2000年代に入ると食糧でもある大豆をインクに使用することが問題視されるようになります。天然資源の枯渇による代替燃料としてバイオ燃料が注目されたことにより、世界的に穀物市場が高騰したからです。

そこで次に注目されたのが食用ではない亜麻仁油、桐油、ヤシ油、米ぬか油など植物由来の油。さらにそれらを主体とした廃食用油等をリサイクルした再生油の活用です。これらを原料として作られたのが“ベジタブルインク”になります。現在ではベジタブルインクは、オフセット印刷において主流となりました。オフセット印刷とは、私たちが毎日の生活で普段から良く目にする本や新聞、雑誌やポスターにカレンダーなど広範囲に使用されている印刷方法です。

そして更に環境への負荷を最大限に考慮した “ノンVOCインク”が誕生しています。これは石油系溶剤を植物油等に置き換え、製造過程も含めて揮発性有機溶剤(VOC)を含んだ鉱物油の使用を1%未満に抑えられたインクです。VOCは空気に触れると大気中に揮発するため大気汚染や化学物質過敏症の原因とも言われているため、このノンVOCインクは従来のベジタブルインクよりも、より環境と人に優しいインクとされています。

【羽車と環境】 印刷用インクの取り組み

画像上:羽車では2021年3月に、石油系溶剤を含まないNon-VOCインクへ切り替えた(一部の特色はVOC軽減インク)


植物油を利用したインクは、世界のあらゆる場所で、その土地で最適な植物油を採用し製品を生産することができ地産地消と供給安定が望めます。また再生油の使用により、廃棄物削減にも貢献できるでしょう。このように長い時間をかけて行われた印刷インクの開発により、今日では、SDGsの開発目標と向き合った活動が可能になったのです。


上記参考文献:
『食・農・環境とSDGs ―持続可能な社会のトータルビジョン―』農村漁村文化協会
『最新印刷業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』秀和システム
『最新版 図解 よくわかる印刷発注のための実務知識』同文館出版
『トコトンやさしい 印刷の本』日刊工業新聞社
印刷インキ工業会 https://www.ink-jpima.org/index.html

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羽車が考えるエコとインク
エコが意識されるに従いインクの歴史も大きく変わってきました。環境を汚す可能性のある製造工程において、製造者が責任を持つことは今や当たり前の時代になりました。 私たちも現在「VOC軽減インク」から「ノンVOCインク」に切り替えていますが、一部の特殊な色についてはインクメーカーでの対応が難しいこともあり切り替えはできていません。可能なものから順次進めていき、できるだけ早い段階で全ての切り替えを行う予定です。

また、VOCはインクだけでなく洗浄液に含まれるVOCの問題も抱えています。羽車ではひとつの印刷作業が終わり、次の仕事(色)にインク替えする際に使う洗浄液についても、環境配慮を考え「100%ノンVOC洗浄液」をこの春より使い始めました。

しかし新たな問題も発生しています。ノンVOC洗浄液は、従来の洗浄液に比べてインクが落ちにくいためインクを洗い流す作業時間が増えました。インク替えをする生産性が悪くなったことで余計な水や電力などを使っているとも言えます。見る角度を変えると何が本当に正しいかを考えさせられます。

大切なことは、急いで全てをエコなものにするのではなく、状況に応じて確実に地球環境に優しい生産に切り替えることだと考えます。またその意味やプロセスをスタッフが共有し、現状でできることから進めていくことも大切にしたいと思います。(2021年5月 企画広報部)
印刷用インクのこと

 

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株式会社 羽車は封筒・紙製品・印刷物の製造販売を行っています。1918年に大阪で創業しました。

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大阪府堺市の本社工場では封筒生産機と印刷機を中心に70台を超える機械が稼働しています。
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