通販ダンボールの進化、常識やぶりの色柄と新たな用途
2013/01/12
普段の生活で利用頻度が多い紙。今回はダンボールについて取り上げます。
物の梱包や保存などで利用されているダンボール。
誕生したルーツには意外な歴史がありました。今回はあまり知られていないダンボールの話、そして現代においての新しい使われ方などをご紹介します。
皆さんは宅配された荷物を受け取った後、梱包に使われたダンボールをどうしているでしょうか。
多くの人は資源ごみなどとして出し、自治体の回収に協力していることと思います。
何しろ、ダンボールは回収率がここ数年、90%台の後半で推移。
回収されたダンボールは古紙として輸出されたり、ダンボールまたはほかの用途に再利用されたりとリサイクルが進められています。
しかし一方で、ごみ捨て場に持っていく前にもう一働きしてもらう、という人もいます。
今回は、梱包用ダンボールの再利用と、それを見越した企業の取り組みについて、お伝えします。
汗取り、梱包、次の用途は?
ダンボールは段ボールとも表記します。
波形の中芯原紙の片面または両面にライナー(平らな紙)を貼り合わせたもの。
断面の波型が階段状に見えるから「段」、原紙にボール紙が使われることから「ボール」で段ボールです。
もともとは19世紀に英国で汗取りとしてシルクハットの内側に使われたのが始まり。
その後、米国でガラス製品を包むのに使われるようになり、1909年、日本の段ボールの父・井上貞治郎氏が創業した聨合紙器(現在のレンゴー)でダンボールの量産技術が確立されました。
戦後には、経済の高度成長に合わせてダンボールの生産量も拡大。
水ぬれに強くする、燃えにくくする、厚みを抑える、四角形以外の形にも組み立てられるようにするなど、さまざまな改良が進みました。
使い勝手が良くなり、使用量が増えると(現在、日本人が1年に使うダンボールは1人当たり150個程度)、用途もまた広がっていきます。
ビジネス向けには、輸送・物流の現場で使うパレット(荷物を乗せる台)にダンボール製のものが登場し、家庭向けにはダンボール製の本棚や勉強机といった、いわゆるダンボール家具が数多く開発されるようになりました。
物流に耐える素材ですから強度は十分、木材から生まれていて温かみがある、軽い、不要になったとき処分しやすい、といった利点を思えば、自然な流れかもしれません。
ダンンボール・パレットやダンボール家具は、メーカーが梱包以外の用途を明確に意図・想定して作る商品ですが、個人のレベルでも、自宅に届いた荷物を梱包していたダンボールを、捨てずに収納ボックスに使うなどの再利用が定番になってきました。
ダンボールにかかわる企業もまた、ユーザーのこうした慣習を想定した工夫をこらすようになっています。
画像上:茶色くないダンボール
ダンボールの生産量は戦後、右肩上がりに伸びてきましたが、2007年をピークとして近年は1990年代の水準に落ち着いています。
全国段ボール工業組合連合会がまとめた2012年の需要予測は前年比で1.2%増の133億m2です。
こんな中、用途別にみたときに予想成長率が6%と最も高いのが「通販・宅配・引越用」。
全段連はいわゆる「巣ごもり消費」の高まりや高齢化社会の進展を背景に、インターネット通販を主体として、この分野は今後も伸長すると予測しています。
この通販ダンボールに、通販事業者が着目しました。
カタログやインターネットを通じて衣類や雑貨、食品、書籍などを販売するフェリシモ(神戸市中央区)は、商品配送用のダンボールにさまざまな色柄を採用しています。
これは同社が取り組む環境負荷軽減策の一環であり、顧客に自宅でダンボールを再利用してもらうことを企図したもの。
フェリシモは同社のダンボールと同柄のマスキングテープなどを商品として用意したり、顧客がダンボールを再利用した例を公式サイトで取り上げたりして、ダンボールのリメイクを積極的に支援しています。
フェリシモといえば、1992年に500色の色えんぴつを発売して、その色数とユニークな色名で話題を呼びました。
「プリズムカラー」と呼ぶ緑系や赤系、青系のグラデーションで彩られた同社定番のダンボールも、なんともいえない味わいがあります。
雑貨が好きな人やDIYに興味のある人は、フェリシモのダンボールを見れば工作意欲をくすぐられそうですね。
大手衣料品メーカーのワコールも、個性的な通販ダンボールを採用しています。
なんと、内側が花柄。
表側ではなく内側に工夫があるところに、外からは見えない下着を提供している企業ならではのこだわりが感じられますね。
見えないおしゃれを楽しもう、というメッセージが伝わってきます。クローゼットの中に置いて、下着を収納するのにも使えそうですね。
実際、ワコールから通販の商品を受け取った顧客が、TwitterやlistagramなどのSNSに「かわいすぎる」「このダンボールに萌える」「捨てられない」などと、好意的な感想を多数投稿しています。
ひょっとすると、企業イメージ向上の新手法として、今後さまざまな業種へ広がっていくのかもしれません。
Amazonダンボールが鹿やエッフェル塔に
さて、カラフルだったり花柄だったり、そんなダンボールばかりがリメイクされているわけではありません。
昔ながらの(?)茶色のダンボールも梱包の役目を果たした後、家具や雑貨に生まれ変わっています。
インターネット通販大手の「Amazon」などのダンボールを使ってインテリアを製作しているのは、大阪を拠点に活動するデザイン・ユニットの「マゴクラ」。
ティッシュ・ケースやケーブル・ボックスから、クリスマス・ツリーにエッフェル塔まで、マゴクラの手にかかれば、見慣れたAmazonダンボールが驚きの変身を遂げていきます。
公式サイトのトップページを飾るのはダンボール製のガゼル(2012年12月現在)。
シカ、トナカイと合わせて「紙鹿 SHIKA」シリーズだそうで、複雑なツノの形もきれいに再現されています。
マゴクラの公式サイトでは実際に多くの作品が紹介されています
マゴクラの公式サイトでは、作品の完成写真に加えて製作風景の動画や型紙なども公開しています。ダンボールの構造から切る、折る、貼り合わせるといった各工程のコツも丁寧に解説。ダンボールという素材や、ダンボール工作を楽しむ同志への愛が感じられて、見ているだけでも楽しくなってきますね。インターネット上でも、まとめサイトや掲示板サイトでたびたび取り上げられては賛辞を浴びているマゴクラの作品群。これらを目にしたのがきっかけで、ダンボール工作にトライした人も少なくないのではないでしょうか。
中身を取り出したら、ごみ捨て場へ運ぶべき存在。
もしかすると、これまでそんなふうにダンボールを捉えていた人もいるかもしれません。
資源回収に協力するのも大切なことですが、その前にそのダンボール、いましばらく、お手元にとどめてみませんか? 便利さや楽しさ、いろいろなものを暮らしに足してくれるかもしれません。
羽車企画広報部編集
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ご協力いただいた企業:
マゴクラ http://mago.pepper.jp