香りの世界で欠かせない存在であるムエット~語源やその魅力に触れる~
2023/01/11
調香師が、香水や精油の匂いを確かめる紙として使うことの多い「ムエット」。その方にあった香りを見つけ、楽しむためにも欠かせない存在です。また香りを確かめる以外にも、さまざまな目的や使い方があります。今回は、ムエットの語源や魅力について見ていきましょう。
日本では、「匂い紙(においがみ)」「試香紙(しこうし)」「香料試験紙(こうりょうしけんし)」などとも呼ばれているムエットは、フランス語の「mouiller(浸す)」が語源だといわれています。
またフランスでは、「ムエット」という細長く切ったパンが存在し、このパンを半熟卵やソースに浸して食べることも名前の由来となっているそうです。
画像:一般的なムエット。置いてあるお店によってムエットのデザインも異なります。そのデザイン性の高さや種類の多さから、コレクションする方もいるそうです。
ムエットは、ただ香りを確かめるためのアイテムではありません。
例えば、コスメカウンターにある複数の香水から、気に入ったものを購入したい時。複数の香水を直接肌につけてしまうと香りが混ざり、区別がつかなくなってしまいます。精油に関しては、直接肌につけると炎症を起こす危険性も。そういったトラブルを防ぐためにも、香水や精油をムエットに染みこませて香りを確認するのです。
また香水や精油は、「トップノート(最初の数分)」「ミドルノート(2~4時間)」「ラストノート(約半日)」と、香りの変化を3段階に分けて表します。(※香水の種類によって、香りが持続する時間は異なります)ムエットを使うことによって、香りを持ち帰ることもでき、時間と共にどのように変化していくのかを楽しめるのです。
そのため、「トップノートは好みだったけれど、ミドルノートはそうではなかった」というような失敗も防ぐことができ、お気に入りの香りを見つけやすくなります。
画像:コスメカウンターのムエットのなかには、名刺型のような幅広いタイプも。これは、ムエットを香水に直接浸すのではなく、スプレーを吹きかけることが多いからだといわれています。
ムエットに専用の紙はありませんが、「紙自体は無臭であること」「香りが長時間続くもの」「紙の表面に凹凸があるもの」「一定の吸収量があり、吸収した後に曲がらない」など、いくつか条件が存在します。
香りを確かめる目的で使われているため、紙自体に匂いがついていると本来の香りが分からなくなるのです。また紙の表面に凹凸があることによって、香りも長続きします。香水や精油を浸して使うことから、ある程度の吸収量と耐久性も必要です。もしムエットを作るのであれば、これらの条件を満たす紙を選びましょう。
なかには、紙全体に印刷が施されているムエットもありますが、香水に含まれるエタノールとインクが溶けて混ざり合い、インクの匂いが移ってしまうことも考えられます。そのため、紙とデザインの選択は慎重に行わなければいけません。
香りの移り変わりを楽しめるムエットですが、香水や精油の匂いを確かめる以外にも、実はさまざまな使い方があります。
例えば、「ルームフレングラス」。ムエットにお気に入りの香りを浸し、置いておくだけで部屋中が良い香りで包まれます。ディフェイザーのように、香りを長期間楽しむことは難しいですが、短期間でさまざまな香りを楽しみたい方にはおすすめの使い方です。
ちなみにムエットを使う際は、紙の端を折ってテーブルに置きましょう。そうすることによって、香水や精油がテーブルに付着することを防いでくれます。
またムエットを愛用している方の多くは、本に挟み「栞(しおり)」として活用しているそうです。本を開くと好きな香りが漂いリラックス効果が期待できるため、読書にも集中できそうですね。なかには参考書にムエットを挟み、勉強の合間にリフレッシュできるようにしている方もいます。
このようにムエットは、香りを確かめる以外にもさまざまな使い方があります。
ルームフレングラスや栞として使うのであれば、少し凝ったデザインや色にしても良いかもしれません。香水が付着しない場所に印刷を施したり形を変えてみたりと、アイディア次第でオリジナルのムエットができあがります。好みの香りへと導いてくれるムエット。手にした際には、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
文・鶴田有紀
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参考文献:
『アロマ調香レッスン』新間美也 著
アロマを嗜む時の必須アイテム・ムエットのことを知ろう|マンデイムーンノート
https://www.rakuten.ne.jp/gold/mmoon/note/10833/
ムエット・匂い紙の深い話|香水biz+香る生活|有限会社 武蔵野ワークス
https://www.fragrance.co.jp/editions/?eid=646