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日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

2022/12/07

  • 和傘

パッと開くと、大輪の花を彷彿させる姿。その存在感に、ふと足を止めてしまう人も多いのではないでしょうか。人を惹きつけるほどの美しさが、和傘にはあります。古くから職人の手によって丁寧につくられてきた和傘は、「傘」より「芸術作品」といった方がしっくりくるかもしれません。今回は、そんな美しい和傘の世界を覗いてみましょう。

日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

今でこそ、「和傘は、日本を象徴する伝統工芸品の一つ」と言われていますが、もともとは4世紀頃に中国から伝わりました。当時の傘は雨を凌ぐためのものではなく、魔除けや権力の象徴として使われていたそうです。形状は、開閉ができない構造の大きめの傘だったといわれています。

鎌倉時代に入ると、和傘は小さくなり開閉できる形が登場。同じく鎌倉時代に誕生し、国宝にも指定されている絵巻『一遍聖絵(いっぺんひじりえ)』 にも、開閉できる黒色の傘が描かれています。

その後、和傘を固定する「ハジキ」や傘の骨を束ねる「ろくろ」などの部品の開発や、紙・竹細工の技術が発展していきました。そして、安土桃山時代には雨傘として使われるようになり、一般の人々に広まったのは江戸時代半ばになってからです。(諸説あり)

日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

画像:骨組みをまとめている黒い筒状の部分が「手元ろくろ」。

和傘には「番傘」「蛇の目傘」「日傘」「舞傘」など、さまざまな種類があります。「番傘」と「蛇の目傘」は雨の日に、「日傘」は晴れの日、「舞傘」は舞台や踊りの際に使われる傘です。

一括りに「和傘」と呼ばれていますが、種類によって異なる名前が付けられており、なかには特別な加工を施されているものもあります。このように和傘は、見た目の美しさだけではなく、用途や機能性も考えてつくられているのです。
デザインと機能性の両方を兼ね備えているのであれば、普段使いにも良さそうですね。

日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

和傘づくりで使われる和紙は、原材料である「楮(コウゾ)」や「三椏(ミツマタ)」などを、丁寧に漉(す)いてつくられています。

平安時代に和紙の技術が発達し、日本独自の製法でつくられた和紙は、薄く繊細な見た目からは想像できないほどの、しなやかさと強さを併せ持った紙になりました。手で漉くことによって植物繊維が絡み、薄いのに強くしなやかな和紙ができあがるのです。この技術は、日本が世界に誇れるものの一つと言えるでしょう。

日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

現在も、和紙の原材料の処理から加工まで、全工程を人の手によって行っている和傘屋さんも存在します。

人の手によって行われる繊細な作業や、長年和紙づくりを行ってきたことで得られる感覚と匠の技。これ等が合わさることによって、機械ではつくりだせない美しく丈夫な和紙ができあがるのです。また、天然の植物繊維を使うと、漉いた時に繊維を絡ませることができ、強靭でしなやかな和紙になります。

日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

雨の中で和傘をさすと、和紙が雨をはじき、水の玉がつるりと落ちていく光景を見たことのある人もいるのではないでしょうか。和傘を雨の日に使うと、晴れの日とはまた違った表情を見せてくれます。

しかし、なかには「和紙でできているのに、なぜ水をはじくのだろう?」と思う人もいるかもしれません。和傘には、最初にお伝えしたように、雨傘として使える「番傘」と「蛇の目傘」があります。この2つの和傘には、亜麻仁油や桐油などの植物油を染みこませているため、水をはじき雨の中でも安心して使えるのです。

近頃は洋傘が普及し、あまり和傘をさして歩く人を見かけなくなりました。和傘より比較的安価に購入できる洋傘の普及が、理由の1つだと考えられます。また、洋傘のデザイン性も高く気軽に使えるところが、今の時代に合っているのかもしれません。

その一方で、最近は、アーティストやクリエイターとコラボレーションした和傘を企画したり、SNSやメディアに登場したりするなど、業界を盛り上げようとしている若手和傘職人の活動も目立ちます。そういった人々の努力もあり、一部の若者から再び注目されるようになりました。

日本を代表する伝統工芸品~現代に続く和傘の世界~

画像:和傘×モダンが素敵だという理由から、結婚式の前撮りの際に和傘を持つ若者も増えているそうです。

また、「これからも和傘の歴史や文化を守り続けたい」と考え、和傘づくりの技術を間接照明に活かした老舗の和傘屋さんもあります。和傘を天日干ししている際に、傘に日の光が当たる様子が美しく、そこからヒントを得たそうです。時代と共に姿を変えることも、伝統を守る方法の1つなのかもしれませんね。

このように和傘には、これまでの歴史と伝統がつくりだす良さがあると同時に、新しい可能性も秘めています。見た目も美しく洗練されている和傘は、さすだけで憂鬱な雨の日も楽しくしてくれるでしょう。柄によって雰囲気も変わるため、お気に入りの1本を見つけてみてください。


文・鶴田有紀


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参考文献:
京和傘の作り方|株式会社 日吉屋
https://hiyoshiya.wagasa.com/kyowagasa/made/
和傘に使う油について|一般社団法人 日本植物油協会
https://www.oil.or.jp/trivia/wagasa.html
日本の傘にまつわる略年表&傘の構造と和傘の工程 機関紙『水の文化』50号 雨に寄り添う傘|ミツカン水の文化センター
https://www.mizu.gr.jp/images/main/kikanshi/no50/mizu50e.pdf
和傘は和紙と竹で出来ている|有限会社 辻倉
https://www.kyoto-tsujikura.com/wagasa_making/?doing_wp_cron=1660808256.7411849498748779296875

 

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