懐かしくてかわいい、キャンディーの包み紙(後編)
2021/05/12
最近では見かける機会が少なくなった、ひねり包装のキャンディー。 けれど昔ながらの包装にこだわり、守り続けているお菓子メーカーもあります。 後編では、愛媛銘菓「別子飴」の包み紙に焦点を当て、地域の歴史を伝える郷土菓子として多くの人々を惹きつける理由を紐解きます。
画像上:愛媛銘菓として長年親しまれる別子飴
柔らかく温もりあふれる色使いと、包み紙を広げると現れる細やかな絵柄に、思わず見入ってしまう愛媛銘菓「別子飴」。
地元の人々はもちろん、瀬戸内海の観光土産として長らく親しまれてきました。
愛媛県新居浜市にある別子飴本舗が別子飴を製造販売するようになったのは、昭和初期のこと。昭和元(1926)年に乳菓飴製品を生み出し、昭和12(1937)年に地元の別子銅山にちなんで乳菓飴製品を別子飴と名付けて販売するようになりました。このタイミングで、社名も愛媛飴本舗から別子飴本舗に変更。元禄4(1691)年から約280年続いた別子銅山の歴史を世の中に広く伝えたいという思いから、別子飴は誕生しました。
別子飴の包み紙や箱入りタイプの包装紙を手掛けたのは、商業デザイナー・松本紅白氏。包み紙を広げると真ん中に商品ロゴがあり、両端に別子銅山をはじめ瀬戸内海や鳴門の渦潮、香川の金毘羅山などが細やかに描かれています。この地の風土や歴史を伝えるイラストが特徴的で、中身の飴を食べながら、じっくり眺めて楽しむことができます。
画像上:別子飴は昔ながらのオブラートに包まれている
別子飴は味によって包み紙の色が異なり、黄色はみかん、緑は抹茶、赤はいちご、青はココア、オレンジはピーナッツ。包み紙の外側が和紙調になっていることで柔らかい発色になり、どの色味も別子飴ならではの雰囲気を醸し出しています。
これらは詰め合わせで販売されているため、“5色そろってこそ別子飴”というイメージが定着。地元の人々はそれぞれお気に入りの味があり、「おじいちゃんには青、おばあちゃんにはオレンジ」などと、家族で分け合って食べるそう。包み紙も味わいも、昔から変わらずに引き継がれてきたからこそ、愛される存在となっています。
さらに、中身の飴をオブラートで包んでいるのも、昔から変わらないところ。包み紙の内側は飴の品質を保持するためのコーティングが施されているため、オブラートがなくても品質には問題ありませんが、「昔ながらの装いを残していきたい」という作り手の思いが込められています。
画像上:別子飴の復刻版パッケージ
ここ数年で別子飴は若い世代から「レトロでかわいい」と人気を集めるようになりましたが、そのきっかけは復刻版パッケージでした。
復刻版パッケージは若い世代の人たちにも手軽に手に取ってもらえるよう、5種類が1個ずつ入った小袋。百貨店や雑貨店など全国各地で販売され、センスあふれるデザインが多くの人の目に触れるようになりました。時代に合わせた売り方で、注目されるようになったのです。
画像上:箱入りタイプの包装紙は、7色刷り
ちなみに、箱入りタイプの別子飴の包装紙も、松本紅白氏がデザインしたもの。別子銅山の風景を描いて川柳を詠み、7色刷りで印象的な黄色に仕上げています。飴の包み紙はもちろん、箱入りタイプの包装紙も人気があるといいます。
初めて別子飴を手にしても、そのデザインや味わいに、思わず「懐かしい」という言葉が出てくるはず。それは、昔ながらの味わいはもちろん、松本紅白氏が手掛けたデザインが、時代を経てもなお人々を惹きつけるインパクトのあるものだからこそ。
歴史と伝統を大切に守り続けることで、別子飴はこれからも多くの人々に愛され続けていくのでしょう。
文・松尾友喜
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取材協力:
別子飴本舗
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