ギャラリーの印刷物
2022/09/01
アートギャラリーの空間づくりでは、お客様に「アーティストの感性や作品のコンセプトを、どのように伝えるか」を考えることが大切です。アーティストとの関係性や、お客様が感じるであろう印象などをイメージし、世界観を組み立てていきます。そして、アーティストやお客様とコミュニケーションをとる際に欠かせないのが、名刺やショップカード・ビジネス封筒などの印刷物です。 小物の物販用に、平袋が必要な場合もあるでしょう。デザインを決める際は、「主張は強すぎず、印象に残る印刷物」を意識すると一体感が生まれます。今回は、アートギャラリーに必要な印刷物や作成する際のコツをご紹介します。
アートギャラリーで使われる印刷物とは
①アーティストとギャラリーをつなぐ名刺
②手元に残してもらいたいショップカード
③小物などの物販用に必要な平袋
④イベントに使うコースターなど
アートギャラリーで使われる印刷物には、このようなものが挙げられます。
ギャラリーにあった印刷物を使うことのメリットとは
世界有数の美術館来訪者数を誇る日本。多くの国民が、アートに高い関心をもっていることが伺えます。そして「日本アート産業に関する市場調査2021」によると、画廊やギャラリーで国内事業者から購入した美術品の総額は857億円。購入の目的も、「飾るため」「実用品として使うため」は勿論ですが、なかには「作家を支援するため」と回答する人もいます。
これからのアート市場を盛り上げていくためには、多くのお客様がアーティストの存在を知り興味をもってもらうことも大切ではないでしょうか。そのなかでアートギャラリーの役割は、「あそこに行くと面白い作品に出会える」「素敵な世界観だったから、もう一度行きたい」と、記憶に残り再び足を運んでもらえるような工夫をすることだと思います。
名刺やショップカードなどの印刷物は持ち帰れるため、見るたび触れるたびにアートギャラリーのことを思い出すきっかけとなるでしょう。
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2021」エートーキョー(株)、(一社)芸術と創造(https://artmarket.report/2021)
アートギャラリーの印刷物 キーワードは「さり気なく印象づける」
表現の場であるアートギャラリーは、アーティストの作品を際立たせる土台とも言える場所です。主役はアーティストと作品のため、アートギャラリーで使用する印刷物は、主張が強くならないよう、さり気なく印象づけるものがよいでしょう。
代わりに、紙の厚さや質感が特徴的なものを選び触覚に訴えかける。テーマカラーやワンポイントのロゴを入れて、ギャラリーの世界観を印刷物に忍ばせる。このように「控え目だけれど印象に残る」工夫をすることで、アーティストの魅力も伝わり、ギャラリーの存在も感じられる印刷物になります。
ギャラリーで使う印刷物
①名刺
ギャラリーや自分のことを知ってもらうために渡す名刺は、その小さな紙の中に沢山の情報が詰まっています。書体や色などにこだわり、オリジナルの名刺をつくることで相手にも覚えてもらいやすくなるでしょう。
イラストを入れると、さらに印象に残る名刺になります。スタッフごとにイラストを変えたり、数種類の名刺を季節ごとに使い分けたりするのもよいですね。また、デジタルカラー印刷を活用すれば、気軽に鮮やかな色合いを楽しめます。反対に、あえて文字のみのシンプルなデザインにすると余白が生まれ、伝えたいことや文字の美しさが際立ちます。メッセージ性の高さと美しさから、アーティストやクリエイターにも好感をもってもらえるのではないでしょうか。
紙素材にもこだわるとワンランク上の名刺になります。例えば、やわらかく質感のよいコットン紙を使うと丁寧な印象に。カジュアルな雰囲気にしたい時は、ラフな質感を楽しめるBasicやボード紙を選ぶなど、ギャラリーの雰囲気に合わせるのもおすすめです。
出会いの機会を演出する名刺
さらに名刺は、ギャラリーとアーティストとの出会いをつなぐ営業ツールでもあります。
日本各地で、さまざまなアーティストが自身の想いを伝えるために活動しています。そしてギャラリーも、アーティストを応援したい、特に同じ想いを抱く若いアーティストの成長をサポートしたい、との思いがあるでしょう。アーティストとギャラリーは、方向性を理解しお互いに信頼できる関係性を持つことで、「またあのギャラリーで、自分の作品を展示したい」と長い時間を共に歩んでいけるのではないでしょうか。
経営が難しいと言われるなか、素敵なアーティストとの出会いは大切な機会。名刺交換の時間は、感性を感じあい相手の心を掴むきっかけとなるかもしれません。こだわって作った名刺は、特にクリエイティブなお仕事の方を惹きつけ、素敵な出会いにつながるでしょう。
②ショップカード
ギャラリー内には、ショップカードが置いてあることもあります。デザインはさまざまですが、ギャラリーらしさを感じられるシンプルなカードが多いようです。そのため紙素材や印刷方法にこだわり、ギャラリーのイメージを表現するとよいかもしれませんね。
例えば、シンプルな中に上品な印象も与えたい場合は「箔押し」がおすすめです。写真のように、カッパー色(銅)の面積の大きな箔押しを施すと、上品で目を引くショップカードに仕上がります。また、名前にも箔を使用することで、華やかだけれどシンプルさもあるショップカードになりました。
さらに、紙素材は超特厚紙を選択。思わず触れたくなるほどの厚い紙は、存在感や高級感があります。上質な仕上がりのショップカードを受け取った側は、手元に残したいと感じてくれるでしょう。
③平袋
アーティストの作品が1冊にまとめられている作品集は、アートギャラリーを訪れた人が購入することの多いアイテムの1つです。そのため、小物や作品集を販売する際にパッケージの準備は欠かせません。デザインは華美になりすぎず、ごくシンプルな袋がよさそうです。
そして、紙素材や形・デザインは勿論、利便性も考えて作りましょう。例えば、持ち運ぶことを考えて持ち手を付けると移動の邪魔になりません。
書店でよく見かける、温かみがありナチュラルな印象を与えるクラフト紙のレジ袋。さり気なくギャラリー名がデザインされていると個性も伝わります。折口が決まっていないため、書籍に合わせて袋の大きさも変えられます。写真のようにシールを付けると、中身が出てくる心配もありません。
④その他 DVDなど
アートギャラリーで販売する作品集は、冊子のみとは限りません。映像作品をDVDに入れる場合もあります。そのため、DVDなど割れやすいものを販売する際は、緩衝材+封筒でパッケージにすることをおすすめします。また、紙素材も、未晒クラフトのような破れにくく強度に優れたものを選ぶとさらに安心でしょう。パッケージとDVDをトータルデザインすると、統一感もあり素敵です。
⑤イベントのコースター
オープニング、クロージングパーティだけではなく、周年記念やコラボレーション企画などのイベントにコースターは華を添えてくれるアイテムです。また、印刷加工の方法や紙素材の種類が変わると、コースターの雰囲気も変化します。イメージに合わせて作ることによって、イベントやパーティーをさらに盛り上げてくれるでしょう。
お客様の制作例(デザインギャラリーより)
印象的で上品さを兼ね合わせた世界観の名刺
洗練されたシンプルな印象の名刺。グレーの紙にホワイト箔がバランスよい存在感になっています。
INtoOUT&Co. & doors yamazoe様の制作例(ギャラリー)はこちら
和と洋が調和したショップカード
器とギャラリーのお店のショップカード。グレーのボード紙の質感+小さな金の箔押しがポイントになっています。
ヨリフネ様の制作例(ギャラリー)はこちら
手書きデザインの封筒
やわらかな和紙素材の質感を感じるタテ長の封筒。蛍光色の手書き文字がアクセントになり印象的な封筒に仕上がりました。
株式会社ギャラリー桜の木様の制作例(ギャラリー)はこちら
まとめ
アートギャラリーで使用する印刷物は、「アーティスト自身のイメージやつくりだす世界観の邪魔はせずに、印象に残るもの」が理想です。
ワンポイントにロゴを入れたり紙素材にこだわってみたりと、印刷物に触れるたびに「あのギャラリーだな」と思い出すような、さり気ない工夫を散りばめてみてください。再び足を運んでもらえるきっかけになるかもしれません。
多くの人に存在を知ってもらうためのツールであり、人と人をつなぐきっかけにもなる印刷物を作成し、ぜひアートギャラリーの運営にお役立てください。