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【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺

2022/05/06

香川県東かがわ市は、国内シェア90%を誇る手袋の産地であることをご存知でしょうか。130年以上も続く歴史と技術力は海外でも高く評価され、多種多様な手袋が作られています。知る人ぞ知る産地にとどまることなく、手袋と地域の魅力を広く発信すべく誕生したのが手袋と“手”にまつわるオリジナル商品を展開するブランド「tet.(テト)」です。地域と伴走してきた「tet.」のこれまでの歩みと、ブランド誕生と共に作られた名刺に込めた思いを取材しました。

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


地域が持つ貴重な資源をブランディングすることで、産業も人も元気になっていくーー。それを体現しているのが「tet.」です。ブランド誕生から6年を迎えたtet.は、地元に根付いたものづくりの中で、デザインの力をどのように使い、ブランドを成長させ、地域に貢献してきたのでしょう。ブランドマネージャーの松下文様とデザインを手掛けた野田竜平様(LED)にお話しを伺いました。

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


地域と共に悩み、探り、進んでいくtet.のものづくり
「tet.」ブランドマネージャー 松下文様
「tet.を立ち上げたきっかけは、いくつかの要素が重なり合っているのですが、日本一と呼ばれる産業があるのに、知る人ぞ知る産地にとどまっているのはもったいない。もっとたくさんの方に香川の手袋産業のこと、この町のことを知ってもらいたい、というのが大きな理由のひとつでした。

私自身、東かがわ市出身で、東かがわといえば手袋と思っていたのですが、いざ県外に出てみると意外にも知られていないことは実感していました。実家が商売をしていた関係で、いずれUターンをすることを視野に入れていたのですが、地元にスポットがあたり、地域に還元できるような仕事がないかな……と思っていた時に、地場の産業を活かしたオリジナルブランド開発を手掛け、手袋ブランドの立ち上げを検討していた株式会社エイトワンとの出会いがありました」

「コンセプトは、東かがわで作られる手袋を中心に、“手”にまつわるオリジナル商品を展開し香川の手袋産業の認知度をあげること。それから、産業の今を伝えることで、これからの地域について産地と一緒に考えていくことを掲げています。コンセプトをあえて少しふわっとさせているのは、地域にとって、産業にとって、何がベストな形であるのか、明確な答えがまだないからです。地域に根差してそれを探りながら進んでいく、一緒に考えていく、そのプロセス自体もブランドの側面として捉えてもらえたらと思っています」

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺

photo by Youhei Sogabe

多様性に富んだ東かがわ市の手袋産業
「tet.では、機能性、耐久性、デザイン性、それぞれの要素のバランス感を大切にしています。機能やつくり(構造)の裏付けという部分に関しては、産地ならではの長年のノウハウがあるので自信を持ってお届けできると思っています。

縫製は動力ミシンで行い、編み手袋は、自動のニットマシンが編み上げますが、機械は人間のように“いい按配”というのを調整できません。思い描いた通りぴったり作れるような指示を作り出すまでが、職人の繊細な手仕事のなせる業だと思います。その他にも、洗って風合いを出す工程や、糸始末、仕上げ、検品などもありますが、ひとつひとつが手作業です」

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


「東かがわの手袋の特徴として、とても多様性に富んだ手袋が生み出されている、という点が挙げられます。いわゆるファッション雑貨としての日常使いのニット手袋もあれば、革手袋もあり、それ以外には、ゴルフ、野球、スキー、自転車、フェンシングなど、ありとあらゆるスポーツの手袋。消防士、自衛隊、警察官、レスキュー隊など、特殊な作業にあたるプロの手袋も作っています。さらには、多くの方が普段目にする機会はほとんどないような、自動車工場など、ものづくりの現場で使われる作業手袋なども作っています。

その多様性とバリエーションの多さが、特殊な生態系のようでおもしろいなといつも感じています。海外には革手袋で有名な町はありますが、人口が3万人弱の小さな町で、ここまで多様性を持った手袋を生み出しているところは他にあるでしょうか。tet.の手袋を通してそんなことも感じてもらえたらうれしいですね」

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


五感で“いいな”と感じていただけるブランドに
「ブランドとしていつも大切にしていることは、背景に産地を背負っていることを忘れないこと。そして、それとは真逆になりますが、産地は関係ないという気持ちも同時に持つことです。お客様と対峙する時は、私たちが伝える内容によってその方が抱く産地のイメージが変わるので、産地を背負っていると言うと少しおこがましい気もしますが、産地が紡いできた歴史の上に私たち自身も成り立っていることを忘れないように、そういう気持ちを大切にしようと常に思っています。

一方で、お客様に対して産地を押し付けすぎてしまうのも違うかな、という考えも持っているということです。私たちの活動が、地域のために少しでもつながればと常々考えていますが、楽しくお買い物をされているお客様にとって、私たちの気持ちや産地の事情は関係ないこともあります。もちろん産地発のブランドなので、ストーリーとして産地は切っても切り離せない要素ではあるのですが、それを抜きにしたとしても、可愛いとか肌触りがよいとか、着け心地がいいとか五感で感じた時にいいなと思って選んで頂けるブランドでありたいですし、そこに対する努力を怠ってはいけないなと思っています。

仮にひとめぼれして買って頂いたあとに、tet.のことを検索して、こんな背景があったんだ、と知っていただくことも私たちにとってはすごくうれしいことで、知りたくなった時にきちんと伝わるように準備しておくことも大切だと考えています」

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺

photo by Yusuke Kida
  
デザインは自分たちを成長させてくれるもの
デザインという言葉そのものの定義はかなり広いと思うのですが、正直、地方だとデザイン=「かっこいい見た目」「おしゃれな見た目」のことと捉えられるところがまだまだあるように感じます。ですが、私たちがブランドを運営するようになって改めて学んだことは、デザインはそういった表層の部分だけではなく、最終的なアウトプットに行きつくまでにどういう風に設計して組み立てていくかという、その道筋をつくることすべてがデザインなのかな、ということです。
  
土台となる考え方や方向性など、基礎となる部分がしっかり定まっていなければデザインは進まないので、事業者にとっては、改めて自分たちの事業に向き合うことでもあり、それを人に伝えられるレベルに分解・整理していく作業が必要になります。それこそが事業者にとっては力をつけることになると思っていて、そういう意味では、デザインとは自分たちを成長させてくれるものでもあるのかな、と思います」
  
  

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


手と手を介すことで伝わる、温度と手触り
「tet.の名刺は、ブランド立ち上げの際にデザインをしました。私たちの会社はブランド事業が主軸ですので、名刺もブランドの一部として見てもらえるようにデザインを考えました。そのおかげもあってか、名刺をお渡しすると、表も裏もじっくり見て頂き、そこに配されたロゴやシンボル、デザインの意図を尋ねられたり、褒めて頂いたりすることも多く、自己紹介の延長で会話の拡がりが生まれることを実感しています。出番が減っているとはいえ、紙や印刷の手触り感、温度感みたいなものは、実際に手に取ることでしか感じ取れないものだと思いますし、私自身もとても気に入っています」

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


「手袋の産地である東かがわの認知をあげることを目標に掲げ、活動を続けてきましたが、香川、東かがわ=手袋という認知が広がったかというと、まだまだだと感じています。引き続きtet.の活動を通じて、東かがわや手袋のことをより多くの方に知ってもらえるように、産地にしっかり根ざして地域を見つめ、いろんなメーカーさんと対話を重ねる中で見つける小さな気づきを、柔軟にアクションにつなげていけるようなそんな存在でありたいなと思います。

それは必ずしも商品を作って売る、ということだけにとどまらないと思いますが、私たちの立場だからこそできることに常にチャレンジし、地域に還元できるようなそんなチームでありたいなと思っています。ゆくゆくはわざわざ訪れたくなるような場所も、この地に作りたいと思っています。

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


デザインについて
“+”のデザインに込めた思い
LED enterprise デザイナー 野田竜平様

「tet.(テト)というブランド名は、さまざまなものを生み出す“手”に着目し『“手と(テト)”その先に広がる多様な物語を伝えていく』という想いを込めてつけたそうです。ネーミングが決定した段階で、tet.の“t”を“+”に見立ててロゴ化する、ということまで決まっていたので、あらゆるものをつなぐ象徴として、“+”のデザインをさまざまな場所・ツールで展開しています。名刺もそのひとつなのですが、やりすぎ感が出ないように、仕様とレイアウトのバランスを取るのが難しかったです。
  
  

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


「名刺の紙は、活版印刷の風合いが活きるよう適度な厚みと風合いを持ったBasic プレインホワイトを選びました。紙の主張が強すぎず、程よい存在感を感じるところが良い点だと思っています。加工は、ブランドマネージャーである松下さんの名刺のみ、革手袋やカシミヤ手袋用のパッケージ箱とリンクさせて、“+”柄に箔押しを施しました。通常仕様の名刺も活版印刷を採用したことで、程よい風合いと存在感を感じてもらえるようになったと思います」

名刺とは“自己紹介”を具現化したもの
「昨今では名刺の出番がどんどん減っていっていますが、だからこそ、個性や意志のある名刺をいただくとハッとしますし、その方の印象が強く残ります。 名刺は(個人または企業の)自己紹介を具現化したもの、だと私は解釈しています。いわゆる自己紹介においても、声が大きすぎたり内容が濃すぎたりすると、相手に受け入れてもらいにくくなってしまうと思いますが、名刺もそれと同じ。覚えてもらいたいという思いはありつつも、無理なく受け入れてもらえるような、程よい存在感に落とし込むことが重要だと考えています。

取材をさせていただいて
手袋を作って売るだけでなく、地域と共に悩み、探り、一歩一歩進んでいくことで東かがわ市は産地としても活性化し、手袋産業が持続可能なものづくりとして、さらに永く未来へ繋がり始めているように思いました。多様性がより求められる今後の社会において、これからどんな手袋と“手”にまつわるプロダクトが生まれていくのか、とても楽しみです。(企画広報部)



制作例紹介

【企業事例】手から手へ、思いと温度を伝える「tet.」の名刺


空気感を感じてもらえるようにデザイン(Basic プレインホワイト)
 
名刺(片面箔押し)
[商品] ネームカード Basic プレインホワイト 260g
[サイズ] 55×91mm
[表面] 活版印刷1色 印刷色:ブルー(基本色)※範囲:〜150㎠
[裏面] 箔押し加工 1箇所 箔色:ツヤ有シルバー ※範囲:~50㎠

名刺(両面活版印刷)
[商品] ネームカード Basic プレインホワイト 260g
[サイズ] 55×91mm
[表面] 活版印刷1色 印刷色:ブルー(基本色)※範囲:〜150㎠
[裏面] 活版印刷1色 印刷色:ブルー(基本色)※範囲:〜150㎠

デザイン:LED enterprise  野田竜平様 作品提供者・業種:株式会社tet.様


制作例(デザインギャラリー)
今回ご紹介したカードの詳細はこちら

 

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