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世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

2015/09/15

  • 折り紙

日本人であれば誰もが折れるであろう折り鶴。
子どもの遊び道具の定番でもある折り紙は、どのように誕生したのでしょうか。
折り紙の歴史を紐解く連載の最終回は、折り紙の可能性を広げる二組のアーティストを紹介していきます。

世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

画像上:Diamondback/Eric Gjerde

「ORIGAMI」は今や世界共通の言葉です。
昨年アメリカで開催された国際的な折り紙イベントには、世界中から折り紙作家が集まり、その精巧な作品が大きな話題を呼びました。
近代の折り紙は、リアルさを徹底的に追求しているのが特徴。
90年代に、折り紙独自の計算式に基づいた設計図をつくることが可能になってから、熊の爪先や蛇のウロコに至るまで、細かなディティールを再現できるようになったと言います。

紙の話からすこし逸れますが、この数学的な折り紙の発明は、芸術だけでなく、異分野で結実していきます。
「簡単に小さくまとまる」という特徴を活かし、人工衛星のソーラーパネルや車のエアバッグ、動脈を広げる医療器具など、私たちの思いも寄らぬところで折り紙の仕組みが利用されています。
折り紙は、誰でも遊べる単純さ、美しさだけでなく、人間が生きる上での技術に役立つという大きな可能性を持ち合わせているのです。

世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

画像上:中島種二「カワイイヲリガミ」復刻版。戦前のデザインとは思えぬほど、大胆でモダン。

世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

画像上:「清少納言知恵の板」と呼ばれる日本古来の紙パズル。

COCHAEの手により「TANGRAMちゃん」として生まれ変わった。

過去に話を戻しましょう。
昭和12年(1937)、一軒のお店が銀座にのれんを掲げます。
その店の名は「西銀座・吾八(ごはち)」。
同年に創刊した美術雑誌「阪急美術」の編集長であった山内金三郎(1886~1966)が、郷土玩具や紙の道具などを販売していた、いわば雑貨のセレクトショップです。

そこで扱われていたのが、戦前の折り紙作家である中島種二の作品「カワイイヲリガミ」です。
これは、絵柄のついた紙に指示通りにハサミをいれて折ると動物や家などが完成するというとても可愛らしいものでしたが、数冊の著書しか残しておらず、今となっては、その折り紙を知る人間はわずかでした。

しかし最近、この中島の折り紙に注目が集まっています。
そのきっかけとなったのは、軸原ヨウスケ、武田美貴によるデザインユニット、COCHAE (コチャエ)。
“あそびのデザイン”をテーマに活動していた二人がたまたま入手した古いスクラップブックに、中島の折り紙が保存されていたのです。
二人は「カワイイヲリガミ」に惹かれ、復刻に取り組みます。
発売されるや否や、そのモダンなデザインやユーモアが大きな反響を呼びました。

「折り紙の魅力とは、単純なペラペラ平面の紙が立体になり、生命を持つところ。
折り紙だけに留まらず、幅広く日本やアジアにあった遊びを探求しながら世界に向けて発信する、遊びのグッズメーカーとして面白い試みをしていきたいと考えています」(コチャエ・武田美貴)

世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

画像上:Mademoiselle Maurice
モーリスの最初の作品。パリの街に(原発)NOという言葉を残した。

世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

画像上:Mademoiselle Maurice
数百枚の折り紙を壁に貼っていく。

世界に広がるORIGAMIアートの世界(後編)

画像上:Mademoiselle Maurice
封筒などの古紙を使った折り紙も。

マドモアゼル・モーリスは、折り紙を使ってストリートアートに取り組む、29歳のフランス人アーティストです。
フランスで折り紙が知られるようになったのは、ここ最近のことだと言いますが、モーリスもそのひとり。
建築を学んでいた彼女は、日本を訪れていた際、宿泊先にあった折り紙の本を目にします。

そして、日本滞在時に体験することとなった東日本大震災。
パリに帰ってからも被災地について調べる中で、千羽鶴と日本人の関係について知り、折り紙での作品づくりをスタートさせます。
モーリスの折り紙には、見る者の心を揺さぶる力強さを感じることができます。
今では、ストリートだけにとどまらず、イッセイ・ミヤケやルイ・ヴィトンなど、トップブランドとのコラボレーションも手がけるなど、折り紙の可能性を昇華させているアーティストの一人だといえるでしょう。

単なる一枚の紙が、アートとなり、数学となり、命を支えるなんて、誰が思ったでしょうか。
ヨーロッパの結婚式では千羽鶴を飾るカップルが増えているようです。
外国へ行くバッグの中にそっと忍ばせるもよし、子どもと楽しむもよし、おもてなしの際に飾ってもよし。
私たちも自由な発想で楽しみたいものですね。

文 峰典子

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参考:
Robert Lang「The math and magic of origami」
TED Talks (July 2008)

リンク:
COCHAE
http://www.cochae.com/
Mademoiselle Maurice
http://www.mademoisellemaurice.com/en/

関連記事 紙を折って形を作る。文字の発明と折り紙の誕生(前編) > 幼稚園と共にやってきたヨーロッパ折り紙(中編) >

 

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