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舶来品から日本独自の文化へ~かるたの歴史と変遷~(前編)

2021/11/18

  • かるた

どことなく懐かしい記憶がよみがえる、かるた遊び。お正月になると家族みんなで楽しんだ、なんて方もいらっしゃることでしょう。 厚紙で作られた【かるた】の遊び方は、歌かるた・合わせかるた系統と、うんすんかるた系統の二つに分けられます。今回は【歌かるた・合わせかるた】の歴史と変遷を追ってみました。

舶来品から日本独自の文化へ~かるたの歴史と変遷~(前編)

画像上:昔ながらの懐かしい遊びといえば?囲碁に将棋にコマにかるた…。

かるたはポルトガル語の「カルタ=carta」が語源とされ、室町時代末期(安土桃山時代)に日本へ伝来しました。当時から広く受け入れられ、日本でも同様のものが作られ始めたのだとか。

武家から庶民まで幅広く親しまれる中、江戸時代前期には鎖国が完成。その後、かるたの遊び方やデザインにも日本らしさがプラスされ、日本独自の文化へと発展していきました。

舶来品から日本独自の文化へ~かるたの歴史と変遷~(前編)

画像上:小倉百人一首の遊び方は、絵札を読み上げ、下の句が書かれた取り札をとりあって競います。

かるたといえば「小倉百人一首」をイメージする方も多いのでは?小倉百人一首は【歌かるた】の代表的な存在であり、その原点は12世紀後半頃、平安時代の【貝覆い(かいおおい)】にまでさかのぼります。

当初は多くの二枚貝を用意し、それらを伏せて一対になる貝を探し合う遊びでした。公家社会で親しまれる中で装飾品としても重用され、15世紀頃には対となる貝裏に絵や和歌が描かれるようになっていきました。

その当時は古今和歌集や源氏物語、伊勢物語などで登場する和歌が書かれていたようです。男性だけでなく女中たちにも人気のあった貝覆いですが、貝の採取にも限界があります。そこで貝の代わりとして使われたのが「紙」でした。

舶来品から日本独自の文化へ~かるたの歴史と変遷~(前編)

画像上:小倉百人一首。取り札には下の句のみが平仮名で書かれています。

当初は貝形の紙が、16世紀後半以降には扇形が使われ、それぞれ対になる歌が書かれるようになったそうです。歌は次第に、藤原定家の撰とされる小倉百人一首が多用されるようになりました。

17世紀後半には日本独自のかるた文化も円熟の域に。一流の絵師が手がける歌かるたはまさに「美術工芸品でもあり、公家や大名家の嫁入道具に加えられるようになりました。

その一方で木版印刷技術の発展により、庶民にも容易に紙製品が手に入れられる時代に。そこで一般向けの小倉百人一首が大量に作られ、裕福な町人などの嫁入り道具にもなったのだそうです。

舶来品から日本独自の文化へ~かるたの歴史と変遷~(前編)

画像上:滋賀県大津市にある近江神宮は、小倉百人一首の第一首目である天智天皇を祀っていることから、「かるたの聖地」とも称されます。

現在、小倉百人一首は【競技かるた】としても老若男女問わず親しまれています。毎年1月になると、滋賀県の近江神宮では名人位戦・クイーン位戦を開催。競技かるたが題材の映画「ちはやふる」の人気も相乗効果となり、近江神宮は「かるたの聖地」としても注目されています。

また、貝覆いから生まれた歌かるたの他に【合わせかるた】があります。同じ2枚の札が1組となっており、能の演題や狂言などの絵が多く描かれていたようです。他には武具・日用品・などあらゆる題材の作品が生産され、江戸時代後期頃には4枚1組のものも考案されたのだとか。幼いころに遊んだ方もいらっしゃるでしょう「いろはかるた」は、合わせかるたの一種です。

私たちが知る「かるた」といえば「厚紙に手のひらサイズ」ですが、もとは2枚貝の貝殻が原点。そして印刷技術の発展が、より身近な遊びに変わるきっかけとなりました。これからもきっと、長く親しまれ続けることでしょう。

後半では、現在の【花札】につながる【うんすんかるた(天正かるた)】についてご紹介します。


文・杉本友美

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参考文献:
『日本遊戯史~古代から現代までの遊びと社会~』増川宏一/平凡社
『「いろはかるた」の世界』吉海直人/新典社
『ものと人間の文化史173 かるた』江橋崇/法政大学出版局


舶来品から日本独自の文化へ~かるたの歴史と変遷~(後編)

 

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