日本文化を表すラッピング のし紙に込められた思い(後編)
2021/03/12
のし紙とは、日本の贈り物文化が脈々と受け継がれ、時代と共に変化し誕生した物です。
簡略化したと言われますが、そこに込められた相手を思う気持ちに変わりはありません。
のし紙のデザインが持つ意味を知り、今の時代に合った新しいのし紙の姿を探していきましょう。
画像上:(Photo AC)
のし紙のデザインは、「熨斗」「水引」「表書き」「名入れ」の4つで構成されています。「熨斗」
は前半で詳しく説明した通り、熨斗鮑が起源となり生ものの象徴。熨斗をお供え物として添えることで、生ものを添えた贈り物とする意味があります。そのため贈り物自体が果物や鮮魚などの生ものの場合、熨斗は必要ありません。また鮑は縁起物でありお祝いごとに適しているので、弔事の場合に熨斗を用いず水引だけが印刷されているのし紙を使用します。
画像上:(Photo AC)
「水引」は色や結び方、紐の本数で違いを表します。水引の色は、祝儀の場合向かって右側が赤、不祝儀の場合は黒または黄で、いずれの場合も左側は白ですが印刷の関係で金や銀もあります。そして結び方には「何度もあって欲しいこと」と「一度だけで繰り返さないこと」に分けて考えましょう。
蝶結びは、何度も結び直すことができるので、出産など繰り返しても良いお祝い事と中元や歳暮などに。そして一度結んだらほどけない結び切りは、二度と繰り返さないという意味から結婚や内祝い、そして弔事やお見舞いなどで使用します。水引の本数は奇数の3・5・7本を使用し、5本が一般的な本数です。
ただし婚礼では両家の5本ずつを二重にした結びという思いから偶数の10本を用います。その他に赤棒と呼ばれる赤い太線は、水引が省略された形で記念品や賞品、粗品などを贈る場合に使用します。
「表書き」とは水引の上段部分に書く贈り物の目的に関する記載のことで「御祝」や「御供」などが書かれ、「名入れ」は水引の下段に贈り主の名前を記載すること。これらの2つがあることで、何に対しての贈り物なのか、贈り主は誰なのかが一瞬で伝わるようにする役割があります。
画像上:(Photo AC)
そして最近では、これらの要素を踏まえた上で更にデザイン化が進んだのし紙が登場しています。熨斗や水引がよりイラスト化されたもの、表書きが「いつもありがとう」など文章が書かれたもの、季節のお花が描かれたカラフルなものなど、見た目がより華やかになり楽しい雰囲気を感じるものが増えました。どうしてもカジュアルな印象にはなってしまいますが、友人や家族など親しい方への贈り物には、あらたまり過ぎた雰囲気を和らげてくれることから好まれています。
そう、のし紙も形式だけに囚われず見た目も楽しめるようにと工夫されてきています。のし紙は贈答品を受け取った方が1番最初に目にする物で、贈る側のセンスや心意気が表せるものへと進化したのです。贈るシーンや季節、そして相手の年齢や好みに合わせてオリジナルのし紙を添えてみてはいかがでしょうか?
出産祝い、入学祝い、就職祝いに退職祝いなど、私たちは人生の節目節目に贈り物をします。また病気や災害などお見舞いもあるでしょう。贈り物には「大切なあなたのことをいつも思っています」という気持ちが込められています。そして、その気持ちをより分かりやすく相手に伝える方法としてのし紙があります。のし紙とは、古典の考えを尊重し、伝統のエッセンスをうまく取り入れた日本文化を表すラッピングなのです。
文・舟橋朋子
--------------------------------------------------
参考文献:
『日本の折形』誠文堂新光社
『和のこころを伝える 贈りものの包み方 伝統と、新しいこころみ』誠文堂新光社
『熨斗袋』精興社
『一生使えるお作法図鑑』PHP研究所
日本文化を表すラッピング のし紙に込められた思い(前編)