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変わる・変わらない、名刺のいま

2011/08/24

  • 名刺

ビジネスシーンで、誰もが必ず手にする「名刺」。今では、企業から支給される名刺の他に、外部との交流用として「第二の名刺」を作るビジネスパーソンも増えてきているそうです。 今回はとても身近な存在の紙、名刺についてそのトレンドと今後どのような存在になるのか、考察してみたいと思います。

変わる・変わらない、名刺のいま

名刺は変わる!?
先日、東京・日本橋へ出かけたとき、丸善の店頭にちょっとした人だかりができていました。
近づいてみると、キングジムから昨夏発売されたデジタル名刺ホルダーの実演ブースで、実際に名刺を管理する様子を披露しているところでした。

キングジムが行ったアンケート調査(2010年10月実施)によれば、40代の営業職の男性が受け取ってきた名刺の総数は1人当たり平均2,074枚。
1人で2,000枚超の名刺を抱え、さらに日ごと増えていく。
これは確かに、アナログの名刺ホルダーから目当ての一枚を見つけようとすると、かなり骨が折れそうです。
同社の調査では、名刺探しに個人が費やす時間は年間で平均10時間程度になるのだとか。
小型の電子機器に取り込んで持ち歩き、いつでも検索できたら、なるほど、名刺探しの時間や労力は軽減されそうですね。

変わる・変わらない、名刺のいま

一方で、名刺そのものを電子化しようという動きは、現時点で活発とはいえません。
むしろ、紙の名刺をいかに個性的なものにするかということに心を砕く人が増えつつあるようで、新聞や雑誌、Webでそうした工夫を取り上げる記事が数多く見受けられます。
たとえば、2011年5月7日付の日本経済新聞の土曜版では「『第二の名刺』で好印象を」と題する記事を掲載。
セミナーや異業種交流会で、会社から与えられた名刺ではなく、個人で「第二の名刺」を配る人が増えているとして、印象に残る名刺の作り方を解説しています。

具体的には、誰に何をアピールしたいのか明確にする、顔写真や似顔絵を入れる、共感してもらえそうな情報を盛り込む、といったことです。
単に名前と連絡先を記すだけではなく、人の興味を引くような内容にしよう、という主旨でした。
キャッチコピーや趣味、ブログのURLなどを記載した名刺の図解も載っています。
せっかく個人名刺を作るなら、盛り込む項目からこだわりたいものですね。

キーワードは素材、質感、そしてインパクト
そうした内容の充実に加えて、ユーザーのこだわりが強まっているのが、素材や質感。
東京・大阪に店舗を構える手紙用品店ウイングド・ウィールでは、名刺製作の受注実績から「質感がありシンプルなもの」「素材にインパクトがあるもの」が好まれることが分かったといいます。

コットンペーパーや和紙などを素材に選び、手に取ったときの触感などによって個性を演出する向きがあるようです。
顧客の男女比は4:6、男性は30代~50代、女性は20代~30代が多く、職業や趣味に関連のあるモチーフを名刺のデザインに取り入れる人も多いといいます。

先述のキングジムの調査でも、印象に残る名刺の条件は、第1位が「顔写真付き」(47%)、僅差の第2位が「素材が特徴的」(45%)、次いで第3位が「色が特徴的」(35%)でした。

実は、この質感や手触りといったものが、名刺を電子化へ向かわせない要因の一つになっているのではないかと筆者は感じます。
ほぼ黄金比(縦横比がおよそ1:1.618で、人が美しさを感じやすいバランス)に近い55mm×91mmの紙片に指先で触れたときの感触の面白さ、そして何より、手で触れられるということ自体に魅力や愛着を感じる人は少なくないのではないでしょうか。

変わる・変わらない、名刺のいま

名刺はデジタルになるか?
こんなことがありました。
喫茶店で昼食をとっていたときのこと、隣のテーブルで女子大生の二人連れが熱心に話し込んでいます。
「この人、親切だった」「すごく行きたい会社」。
二人が手にしているのは名刺。
どうやら二人は就職活動中で、既に社会人として働く大学の先輩と会談する、いわゆるOB訪問で名刺をもらったようです。
「倍率高そうだけど、受けてみようかな」。
つぶやいた女の子が、あまりベタベタ触ってはいけないと思うのか、名刺の両端を両手でそっとつまむようにして持ち上げていたのが印象的でした。
折からの就職氷河期、厳しい活動を強いられる彼女たちを、その名刺の手触りは、いくらかでも勇気づけたのではないかと想像します。
まるで校長先生が表彰状を読むような角度で、彼女は名刺を眺めていました。

一説によると、名刺の起源は中国・後漢時代までさかのぼり、世界で紙製の名刺が使われるようになって、数百年が過ぎているといいます。
いつか、この流れに「電子データで交換するのが一般的に」などという歴史が書き加えられることがあるでしょうか。
そうかもしれません。
ただ、喫茶店の彼女の顔を思い出してみると、その新しい歴史の訪れは、まだまだ先のことになるような気がしました。

羽車企画広報部編集

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