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人の想いを形に残す色紙~築きあげてきた歴史や文化を辿る~

2023/03/10

  • 色紙

寄せ書きや著名人のサインなどを書く際に使用される色紙(しきし)は、大切な人からのメッセージを残す手段として重宝されてきました。特に、異動や卒業シーズンであるこの時期は、色紙を見かける機会も多くなるでしょう。今回は、色紙の歴史や文化、種類などを見ていきます。

人の想いを形に残す色紙~築きあげてきた歴史や文化を辿る~


色紙 は平安時代に誕生し、室町時代以降 に注目を浴びるようになったといわれています。

もともと染色した紙を「色紙」と呼んでいましたが、和歌や俳句などを書き入れる紙「料紙(りょうし)」としても使われていました。そのなかでも、屏風や障子に貼りつける料紙を「色紙形」と呼ぶようになったのが由来だと言われています。

そして色紙には、和歌や俳句などの「書」をしたためたもの、絵が描かれているもの、絵と書が組み合わさったものの3種類があります。室町時代の色紙には、「三十六歌仙(※)」の歌や、日本の四季(12カ月)を題材にした歌が書かれていたそうです。

そして、色紙の中でも有名なものが、日本を代表する詩人 藤原定家の「小倉色紙」です。
定家は、100枚の色紙に『古今和歌集』や『後拾遺和歌集 (ごしゅういわかしゅう)』などから選んだ和歌を1首ずつ書き、それを京都の小倉山荘の障子に貼りつけました。当時使用された色紙は、正方形に近い形をしており、金や銀の砂子が散りばめられていたり、金箔や銀箔で装飾されていたり文様が描かれていたりと、多種多様なものでした。さらに小倉色紙は、「茶の湯の席で、初めて掛け軸として用いられた色紙」としても知られています。

このように歴史ある貴重な小倉色紙ですが、時代の流れとともに数が減り、江戸時代には100枚から30枚ほどに減ってしまったそうです。

(※) 三十六歌仙:紀貫之や小野小町など、平安時代に名を馳せた36人の歌人に対する総称

人の想いを形に残す色紙~築きあげてきた歴史や文化を辿る~


歴史や文化に触れ色紙に対する理解が深まったところで、続いては、色紙の素材や種類について見ていきましょう。
主に色紙は 、「表紙」「中芯」「砂子紙(すなごがみ)」の、3種類の紙素材を重ね合わせて作られています。

「表紙」は、その名の通り色紙の「表」となる部分です。使用されている素材も、滑らかで油性ペンでも書きやすい奉書紙や、筆との相性が良く水彩画・水墨画に適した画仙紙、淡いクリーム色が特徴であり、絵の具を使用した際の発色が良い鳥の子紙など、種類も豊富なため用途に合わせて選択できます。

「中芯」は、表紙と砂子紙に挟まれている部分です。ある程度の筆圧に耐えられるように、厚くて丈夫なチップボール紙(再生紙)が使用されています。そして「砂子紙」 は色紙の裏面であり、「砂子」とは金箔や銀箔の粉末を指す言葉です。細かい箔が砂に見えることから、「砂子」と呼ばれるようになりました。この金や銀の砂子を、色紙の裏面に吹きつけて装飾します。

「中芯」と「砂子紙」は、ほとんどの色紙が同じ紙素材を使用しており、表紙に貼る紙素材によって種類が変わります。そして、これらを重ね合わせ周囲を金色の帯で縁どると、1枚の色紙になるのです。

人の想いを形に残す色紙~築きあげてきた歴史や文化を辿る~


これまで寄せ書きやサインを書く際に使用されていた色紙ですが、近年は、書店のPOPやイベントで配布するノベルティなど、幅広く活用されています。なかには、キャラクターがプリントされたユニークな色紙をコレクションしている人 もいるそうです。

そういった時代や用途の変化もあり、続々と新しい色紙が誕生しています。例えば、カードタイプの色紙。メッセージカードのようにコンパクトなサイズの色紙を、ギフトボックスに入れて贈ります。通常の色紙は、1人ずつメッセージを書くため時間がかかりますが、カードタイプは待つ必要もなく、効率よくメッセージを書けます。少人数も勿論ですが、学校や職場など人数が多い場合にも最適でしょう。

その他にも、両開き(二つ折り)や三つ折り、四つ折りの色紙も登場しています。一般的な色紙の2倍・3倍の広さがあり、大人数で書く際に適した色紙です。また見開きになっているため、書いたメッセージを見られる心配もなく、プライバシーも守られます。なかには、ケースやギフトボックスが付いている色紙もあり、保管もしやすく贈り物としても品があります。

また一般的な正方形の色紙も、表紙の紙素材が桜や四つ葉のクローバー、幸せの象徴である青い鳥などをプリントしたものであったり、自由に装飾できるようにシールが付いていたりと、華やかな製品を見かけることも多くなりました。

異動や卒業シーズンである3月は、お世話になった職場の人や学校の先生、部活動の先輩などに寄せ書きをする機会も増える時期です。
ぜひ、相手にぴったりな色紙を選び、思い出や感謝の気持ちを形に残しましょう。


文・鶴田有紀


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〈参考文献〉
・小倉百人一首のルーツを探る | 公益財団法人 藤田美術館
https://fujita-museum.or.jp/topics/2020/05/08/914/
・小倉色紙 伝 藤原定家筆 | 公益財団法人 五島美術館
https://www.gotoh-museum.or.jp/2020/10/04/08-049/

 

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